今回はリールのオーバーホール(OH)とメンテナンスについて少しお話をしようと思います。リールといってもベイトリールに限定してですが・・・実は私は若いころ(20代中盤~後半)、アメリカのオールドリールにハマっておりまして、OH、メンテナンスはもちろんのこと、好きすぎるあまり代行輸入販売などもしていた時期もありました。アメリカから送られてきたリールは、そのままの状態で欲しい方、使えるようにした状態で欲しい方の二通りのお客さんがいまして、使えるようにする為にOH、メンテナンスを覚えていった、という感じです。今回は序章編としてOHとメンテナスの簡単なお話をします。以下は自身でOH、メンテナンスをする場合についての内容となりますのでトライする方は自己責任でお願いします・・・
リールもルアーと同じ消耗品。
さて、いくら値段の高いリールであろうと、いくら頑丈であると謳ったリールであろうと、リールはルアーやラインと同じ消耗品です。常に同じコンディションを保つにはOH、メンテナンスを行う必要があります。適正なOH、メンテナンスができればその寿命はぐっと延びますし、コンディション維持も可能です。
OHやメンテのタイミングがわかんないんだけど。
オーバーホールとは、機械製品を部品単位まで分解して清掃・再組み立てを行い、新品時の性能状態に戻す作業のことです。
メンテナンスとは、機器、機械、施設、情報通信システムなどのインフラストラクチャーを正常な状態に保つことをいいます。ここではメンテナンスチェックと言ったほうがわかりやすいでしょうか。
OHとは全分解洗浄、不具合のあるパーツを全て交換、組み上げ。メンテナンスチェックとは不具合が発生しそうな箇所の確認と予防、と考えるとわかりやすいかもしれません。
OH、メンテナンスチェックのタイミングはリールへの負荷の掛け方で変わります。例えばジャイアントベイトばかりをキャストしている、撃ちものでキャスト回数がとても多い、などはリールへの負荷が強い(多い)為、OH、メンテナンスチェックのタイミングは早まります。1日でのキャスト回数は多くない場合でも、毎日釣行している場合は結果的にOH、メンテンナンスのタイミングは早まりますし、強い魚種からの負荷も同様ですね。以下は個人的な魚種ごとのOHとメンテナンス頻度です。現在進行形のものもありますのでそこは予測ですが・・
ブラックバス 週1回釣行 OH/年2回 メンテナンスチェック/月2回
シーバス 週4回釣行 OH/年4回 メンテナンスチェック/月4回
バラマンディ 週1回釣行 OH/年2回 メンテナンスチェック/月2回
グルーパー 週1回釣行 OH/年4回 メンテナンスチェック/月4回
チャドー 週1回釣行 OH/年4回 メンテナンスチェック/月4回
リールに負荷をどれだけ与えたか、ソルト使用か否か、この2つの条件でタイミングは変わります。個人的にキャスト回数や負荷の強さなどのデータを集めたり、仮定しては検証を繰り返しておりますが、簡単な目安を言いますと・・
4000回キャストしたらグリスはなくなる。
これはただの結果です。ですのでみなさんの釣りのスタイルに当てはめてみて、いつ4000回キャストするタイミングになるのか考えてみるのも面白いかもしれません。1日何回キャストしているのか、アバウトでよいので考えてみると、そのタイミングがある程度推測できます。そのタイミングではドライブギヤへのグリスアップが必要かと思います。人によってはソルト使用であれば毎回水洗いするので、グリスの抜けはより早まりますし、ジャイアントベイトの場合はクラッチとギヤへの負荷が強いのでもっとタイミングは早くなるはずです。自分の釣りのスタイルでのタイミングをみつけることが大切かもしれないですね。
グリスアップ後7000~8000回キャストした後の状態。ギヤの歯にグリスは残っていません。
錆とのバトル
リールの動作による負荷以外に、ソルト使用の場合は海水による錆の発生との戦いが生じます。基本的にはすぐに水洗い、乾燥。これ以外、現状防ぎにくいです。防錆性能のあるオイルなどもありますが、すべての箇所に使用できるわけではありません。洗い方は過去のブログを参照していただければと思います。ポイントはどの洗い方でもよいのですが、ラインに残った塩分ができるだけ他の場所に移らないようにスプールを取り外して別で乾燥させるとよいと思います。次は交換(消耗)頻度が高いパーツをご紹介します。
消耗パーツ第1位:ベアリング
ベアリングは脱脂、洗浄、オイルアップ、グリスアップをしたとしても、消耗品と考えてもらうのがベストです。そこに時間をかけるくらいなら交換、というのが私の考え方です。現在は通販ですぐに購入できますし、名の知れたベアリングメーカーのものであれば性能に大きな差はありません。
特に注意すべき箇所はキャストコントロール下、スタードラグ下、ドライブシャフト下のベアリング3カ所です。ここはベアリングに何かしら不具合が生じると、巻き心地に違和感が出やすい箇所です。特にキャストコントロール下とスタードラグ下のベアリングはソルト使用の場合ダメージを受けやすい印象があります。スプールサイドのベアリングについては釣行前に確認、オイルアップをしておけば割と長持ちします。また、ベアリングをブッシュに変えてしまって錆の発生をなくす、というチューニングもあります。スプールサイド以外のベアリングを全てブッシュに変更したアンタレスを長年使用していましたが飛距離も変わりませんし、今思えば本当に楽だったなと思います笑。ですが樹脂製のブッシュの場合は圧力には弱いのでクリアランスの変化が生じる可能性がありますのでご注意を。
消耗パーツ第2位:ピニオン、ドライブギヤ
ギヤも消耗品です。ボディの捻じれやクリアランスの変化によって噛み合わせに変化が起きたり、当初の噛み合わせと違う箇所で組み上げた場合や強い魚種のバイト時、重い魚種へのアワセ時など、負荷やギヤの当たり方で消耗していきます。ギヤのシャリ感が取れない、などで私にOH依頼があるリールの場合、ギヤ交換で治ることが90%以上です。グリスアップで治った!という場合もありますがそれは治ったのではなく、グリスが干渉してかみ合いをごまかしている状態です。残り10%は組み上げ時のクリアランス調整でしょうか。
グルーパーからの負荷によってドライブギヤの歯が欠けています。これはジュラルミンギヤ。私のおススメはブラスギヤです。
消耗パーツ第3位:クラッチカム、クラッチヨーク
このパーツは大体が樹脂製で出来ており、クラッチのオンオフでピニオンを持ち上げるパーツです。このパーツもクラッチのON、OFFで常に摩擦が発生するので消耗します。ギヤがおかしい、とのことで預かったリールも、クラッチカムとクラッチヨークを交換したら改善する場合もあったり、ギヤの噛み合わせと関連性の強いパーツです。このパーツを取り換える際はスプリングも新品に変えちゃいましょう。また、ギヤ比の違うギヤへ変更するチューニングを行う場合は、ギヤだけではなく、ついでにこのパーツも新品へ変更、ウォ―ムシャフトもそのギヤ比にあったものに変更するとよいと思います。
あとはインナーチューブやスタードラグ座金など他にもあるのですが、上記のパーツは予備を購入しておくと、何かあった時の対応がすぐにできて、とてもおススメです。リールパーツは使用するメーカーの代理店や販売店から購入することができます。
オイルとグリスはどう使い分けてるの?
私の場合は耐久性に振ったセッティングが好みなので、オイルを使用する箇所はスプールサイドのベアリングのみ、他は全てグリスです。一部例外的にローラークラッチには逆転しないオイルをさしているぐらいです。基本的にベアリング内をオイルにすると回転は軽くなり、それに伴い巻き心地も変わります。この部分は人それぞれ好みがあると思いますので、釣りのスタイルと耐久性を考えてセレクトすればよいと思います。ドライブギヤにオイルをさすことは個人的にはおススメしないです。すぐに流れますし、他のグリスと干渉しやすくなります。現在は様々なグリスやオイルが販売されています。無難なものから特徴的なものまで沢山あるので色々と試してみて、自分にあったものを見つけるのも面白いですよ。
洗浄ってどうやるの?
パーツの洗浄は私はパーツクリーナー(ブレーキクリーナー)で行っておりますが、灯油やジッポオイルでも可能です。ですがプラスチックパーツや樹脂パーツに影響がある場合もありますので、おススメはパーツクリーナーですね。灯油やジッポオイルを使用する場合は容器はガラスか金属製を使ってください。汚れを取るのにはブラシ(歯ブラシ)や超音波洗浄機が使いやすいです。超音波洗浄機はメガネのレンズを綺麗に洗うものが通販で安く購入することができます。それで十分です。パーツクリーナーを使って洗浄した場合は、結露しますのでよく乾燥させてから次の作業に取り掛かるようにしてください。
分解する時の注意点
ネジを外していくだけなので分解は簡単です。ですがよくあるのが元に戻せない・・・これですよね。必ずメーカーの分解図を手元に準備してください。ネットで検索するとシマノさん、ダイワさん、アブガルシアさんなら出てきます。またスマホで次の作業に入る前にその都度分解前の状態を撮影していくのもおススメです。
まだまだ長くなりそう・・・なのでとりあえず序章編としてはここまで笑。また続編をお話できればと思っています。
それでは良い釣りを!
最後までお読みいただき、ありがとうございました。